行くだけで大吉。
夜行バスに乗って、早朝にバスを降りたら粉雪だった。日はまだ登っているかいないかのせめぎ合い。伊勢市駅前に人はほとんどいない。一緒に降りた乗客くらい。
駅を背にして約160m進むと、伊勢神宮の外宮にたどり着いた。
参拝客はほとんどいない。凍てつく寒さと粉雪で、体の底から冷えてきそう。そう思って、夜行バスに乗る前にチーカマにかじりついた。
木と空の調和と砂利道の音だけが耳に入る。寒さで感度が研ぎ澄まされている。
そう、いままで行きたかった、どうしても行ってみたかった伊勢神宮にいる。
非日常の午前中を過ごしている、旅 。
鳥居は灰色で、ひっそりと悠然と立っている。自然の中に。雪と早朝のイオンで、空気は綺麗だ。
急がず、大地を一歩一歩、踏む。
かつて、五十三次を駆けた江戸っ子たちの、ぬけ参り。
品川から最終地点の伊勢神宮は江戸の庶民の一生に一度の大旅だったろう。
たくさんの足跡を、わたしも踏んだ。
つな缶